動かすちから

 長英の蘭学研究によりもたらされた最先端の知見は、幕末から明治維新へ至るその後の日本の方向性に大きく影響を与えた。だがそれも、中之条の門人をはじめとする多くの援助者の手助けなしには守り伝えることができなかった。
逃亡時の長英はほんの僅か関わっただけで厳しく罪に問われる国家的な重罪人。
それでも彼の仕事の重要性を信じる人々は、自らが捕縛される危険を顧みず彼をかくまった。
 一人の英雄が成し遂げる業績だけで時局を変えるのは難しい。
ごく普通に生活する市井の人々が、差し迫った困難を前に奮い起こすささやかな勇気。
おそらくその積み重ねだけが、世の中をより良い方向へ動かす真のちからとなり得るのだろう。