永久機関


 この装置が何の機能のを有するのか、具体的には良く分からない。そのため再現された外見と動きから推察するしかない。
機構部分の盃状の部分には食塩が入る。この食塩が反対側の重りと釣り合いをとっている。
食塩が大気中の湿気を吸収し重さが増すと盃側に傾き、周囲が乾燥して食塩中の水分が放散すると重り側に傾く。この動作をくり返す機構は、装置の物理的な寿命を無視すれば、大気中の湿度変化がある限り永久に続いてゆく。
 これと似た発想の永久機関が、1760年頃のイギリスに存在した。
ジェームズ・コックスというロンド ンの時計職人が製作した永久機関は、気圧計を組み込んだ時計だった。

大気圧の変動に伴い気圧計の中の水銀が上下し、その上下運動を取り出して巻き上げ歯車を自動巻きする。大気圧の変化が継続する限り歯車を巻き続けるため、過剰に巻き過ぎないように、ある一定のところまで卷くと自動的に歯車が外れる機構まで組み込んであった。
この時計はコックスの死後処分され、所有者を転々とし、一時は行方不明になりながらも、1961年にビクトリア・アルバート博物館に買い取られた。駆動はしていないが現在も見学できるという。
 ただしこの発想で作られた永久機関は、たしかに永久に駆動し続ける可能性はあるものの、自然のエネルギーを常に供給されていることになるため、厳密な意味での永久機関とは言えないだろう。



江戸の永久機関

 江戸の日本にも、永久機関を考案しようと試みる者がいた。

 筏井四郎右衛門満好は、宝暦頃(1760前後)越中国射水郡西広上村の生まれ。文化5年(1808)の「自然登水車」は水の流れのないところでも揚水できる揚水車とある。ただし、この装置には摩擦が考慮されていない。

 久米栄左衛門通賢は、安永9年(1780)讃岐国大川郡馬宿村の生まれの科学者。やはり、文化年間に「自然水(じねんすい)」という揚水機を考案している。
彼は科学者としての理解があったようで、この自然水を公開するにあたり、永久機関は成立しないと明言している。






左: 自然登水車 文化5年(1808)

右: 自然水 文化年間


2図版とも「江戸大博覧会ーモノづくり日本」2003 (国立科学博物館) パンフレットより転載

Perpetual Motion


 The concrete function of this particular device is unknown. Therefore, we have to make guesses based on its reproduced appearance and motion.

Salt is placed on the balance pan of the pair of scales, until it achieves balance with the weight on the other side. The balance leans toward the pan when the salt absorbs moisture, which increases its weight, and leans toward the weight side when the salt dries as the air becomes dry. Ignoring the physical longevity of the device, this structure continues perpetually as long as there are changes in the moisture in the air.

 A perpetual motion based on a similar idea existed in England around the 1760s.

The perpetual motion machine produced by James Cox, a clockmaker in London, was a timepiece equipped with a barometer. The mercury in the barometer rose and fell along with fluctuations in atmospheric pressure. The mechanism was automatically wound by the up-and-down motion.

 The perpetual motion device created according to this idea, however, requires a constant supply of natural energy. Thus, it is not a perpetual motion device in the strict sense.


 During the Edo period, there was an individual in Japan who attempted to invent a perpetual motion machine.

Kume Ezaimon Michitaka, a scientist from Sanuki-no-kuni (now Kagawa Prefecture), invented a pump in the early 19th century, called the “Jinensui.”

He seems to have had an understanding of scientific principles, and when he made the “Jinensui” public, he clearly stated that it was not possible to devise a perpetual motion machine.